投稿日:2023.11.13

株式会社竹中工務店
大阪本社 設計部 設計第2部門
設計3グループ長
秦 敏彦

 

再開発事業における施設建築物の設計を担当する株式会社竹中工務店/秦氏に、広島の街への思いやデザインコンセプトについてお話を伺いました。

 

―設計者の使命として、語り継がれるような広島の新しい風景を創りたい―

広島の街は様々な時間軸での「とき」が感じられる街だと思っています。春夏秋冬の四季が身近に感じられることや、スポーツ観戦といった非日常の楽しさも「とき」を感じる要素のひとつ。さらに大きな時間軸では、三角州という都市の成り立ちから、1945と戦後、そして一歩を踏み出し、これからの未来を感じられる街でもあります。これはきっと他の都市にない広島の街の個性ですし、今回の設計のコンセプトにもそのニュアンスは宿っています。

設計デザインでは、広島の原風景を嵌め込みながら、新しい風景を創ることを意識しました。街区をまたいで垂直に伸びる造形や、太田川がつくり上げた有機的なデルタ地形と呼応するように、大きな壁面に変化を与え、どこから見ても空に広がっていく外観デザイン。これからはじまる広島の新しい風景となるようなデザインを目指しています。

特に、相生通りに面するピロティひろばやオープンテラスは、たくさんの「ひと」が集い、たくさんの「こと」が生まれるようコンテンツも具体的に考えながら検討しています。
大きなプロジェクトですが、ヒューマンスケールに落とし込んで場つくりを考え抜くことで、広島の街なかに、市民に愛されるに新しい「とき」がうまれる場所になってほしいと思っています。

 

30年前、己斐の山道から広島市街地を一望した時、当時建築されたばかりだった高層ビルのシルエットに興奮したことを今でも鮮明に覚えています。広島では各所で様々なプロジェクトが立ち上がり、賑わいの核が広がりつつありますが、本事業は広範囲な街づくりの中でも大切な位置付けだと思っています。生い立ちも含めて、地元広島への愛を感じているとともに、様々なプロジェクトを経て腕を磨いてきた今、やっと恩返しできる機会が巡ってきました。未来に語り継がれるような広島の新しい風景を創る、それが設計者としての使命だと思っています。