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投稿日:2023.11.17

広島市の中心部である中区基町に地上31階、地下1階、高さ約160メートルにおよぶ高層ビルの建設が始まっている。広島商工会議所やオフィス、ホテルなどが入る予定で、ビジネスマンだけではなく観光客や市民が集う新たなにぎわい拠点となる見込みだ。同プロジェクトが掲げる「広島の”新たな物語”を創る」とは何か、プロジェクトのキーマン4名に話を聞いた。

 

相生通り沿い約160メートルの高層ビル建設

 

写真:左から 朝日新聞社 中上、朝日ビルディング 駒谷、UR都市機構 佐々木、UR都市機構 松村

 

中上

まずはこの事業の概要について紹介していきましょうか。場所は相生通り沿い、路面電車の「立町駅」の前ですね。今は駐車場になっています。この地域は都市再生緊急整備地域という場所にあたるわけですが・・・

 

駒谷

簡単に言うと、この地域に今ある建物が古くて現行の耐震基準を満たしていないものになっているので、新たな建物に作り替えなければいけない、というわけですね。以前は朝日新聞社の広島支局が入る広島朝日ビルが建っていましたが、2010年に解体され、今は駐車場になっています。ここに新しい拠点となる高層棟および変電所棟と市営駐輪場棟の3棟を建設する、というプロジェクトですね。

 

出典:朝日新聞

 

佐々木

さらに言えば、今、原爆ドームの近くに広島商工会議所のビルがありますが、こちらも将来どうするかお考えでした。そこで、この基町の新たなビルに広島商工会議所も入る形にして、現状の商工会議所がある場所の活用が広島の魅力を増すことにも繋がっています。

 

駒谷

他にも、この場所には中国電力ネットワークの変電所があって、その機能を継続できる建物づくりが必要となっています。私たち以外にも広島市や中国電力ネットワークなど、さまざまな組織が集まって進めているプロジェクトというわけですね。

 

広島のど真ん中 地元の誇りとなるビルへ

 

 

中上

この高層ビルには広島商工会議所だけではなく、新たなビジネス拠点となる高規格オフィスエリアを設ける他、訪日外国人も滞在するラグジュアリーホテルが入る見込みとなっています。こう聞くと、ビジネス色が強そうですが、1階部分には市民や観光客などの憩いの場となるような巨大なピロティも作る計画になっています。様々な顔を持つことになるこのビルの建設プロジェクトですが、皆さんはこのプロジェクトを進めるにあたって大切なことって何だと思いますか?

 

駒谷

この広島の一等地に、官民が連携して様々な人が集まるビルということで、たぶん何十年に渡って建ち続けるビルになるわけですから、事業性を持たせるということが前提になると思っています。だからこそ、ハード面をしっかりと整えるということがとても大切ですし、おそらくはこの地域のランドマークと言われるような立派な建物となると思っています。でも、もっと大切なのは、地元である広島の人たちに愛されるというか、誇らしく思ってもらえるようなビルにしていかなきゃいけないと思っていますね。例えば、1階部分は高さ約16メートル、広さ約730平米のピロティ広場になるわけですが、ここで様々な催しが開けたり、待ち合わせ場所になったりする憩いの場にしていきたいと思っています。夏にはお祭り、冬にはイルミネーション、野球やサッカーのパブリックビューイングが行われたりね。人通りのある土地に建つ1階エリアですから、通常であればテナントを誘致して商業性を強くすることが多いのですが、そこを市民のための場所として設計する。これは、このビルならではの特徴だと思いますね。

 

松村

このプロジェクトの特徴の一つとして、建物を作っておしまいではなく、その後の運営を地元のエリアマネジメント団体と共同で進めていくという点までも事業方針に掲げていることが挙げられると思います。「カミハチキテル」という行政や大学、民間企業など広島の都心に関わる様々な団体が参画するまちづくりプラットフォームで、「カミハチ」とは紙屋町・八丁堀地区のことですね。だから、このプロジェクトってただのオフィスビルを建てるということではなく、このエリアに関係する人たちが集まって皆のためになるように運用していくことを市民に約束して作っているビルなんですよね。だからこそ、地元の人たちに愛されるようなビルにしなきゃいけないのだと、私も思っています。

 

 

出典:カミハチキテル

 

中上

もっとも、市民だけではなく、他の地域から来た人からも愛されるビルになると思いますよ。このビルは地上約160メートルで、この一帯ではトップクラスの高さを誇る建物になります。当然、景観も抜群です。その高層階には、質の高いホテルを誘致しようと考えています。広島は、国内はもちろん、世界的にも非常に魅力のある観光資源を有する地域でありながら、宿泊する観光客が少ないと言われています。こうした課題にも応えるようなビルになっていくと思いますね。

 

佐々木

広島駅を中心とした人の流れが、今、大きく変わろうとしているんですよね。広島駅の再開発が進み、もうすぐ新たなサッカースタジアムパークが開業します。そんな中でこのビルは、広島市の都心部を横断する相生通り沿いのど真ん中、さらに、本通りなどの賑わいを北側にもつなげるなど、広島都心の人の流れを東西南北に拡げてエリアの価値を高めていくべき位置にあります。だからこのビルって、ここで働く人たちが集まるだけの場所に留まってはいけないと思いますし、色んな人たちが集まるようなエリアにしていく拠点になると思うんです。広島商工会議所が入りますから色んな企業の人が集まるのは間違いないでしょうし、さっき中上さんが言ったように海外からの観光客も来ます。それ以外にも、例えば県外で仕事をしていた人が広島で起業しようと集まってきたり、そういうエリアを作っていく場所であり、そういう拠点を作らなきゃいけないというか。その責任も私たちは担っていると思っています。

 

戦後復興の歴史を受け継ぎ「もう一度広島に貢献を」

 

松村

このプロジェクトって、全国的にも非常に注目度が高いんですよね。土地の権利者っていう意味ではそう多くはないんですが、さっきも話に上がった通り、運営面で関わる地域の人達はすごく多くて。地元からの期待値も高いと思います。そういう意味でプレッシャーもありますが、このプロジェクトチームの結束力はとても強いですからね。URとしても、横浜の本社、大阪の支社からのバックアップもありますし。

 

佐々木

代表施行者としてのURの役割は、建物が完成したら終わりなんです。だけど、このプロジェクトは建物が完成して終わりではなくて、そこが始まりですから。だから、そこに向けてしっかりと助走できるようなところまでしっかりとお手伝いしていきたいと思っています。

 

中上

ホテルやオフィスの誘致もこれからですし、まだまだ決めていかなきゃならない事柄がたくさんあります。完成は2027年予定なので長いプロジェクトになりますが、これが広島のさらなる発展のきっかけになるように、しっかりと頑張っていきたいですね。

 

駒谷

広島の歴史から紐解くと、ここまでに本当に長い道のりがありました。以前建っていた広島朝日ビルが竣工したのは昭和33年12月。広島平和記念公園が出来上がったのは昭和30年、広島市民球場が作られたのは昭和32年。つまり、戦後復興によって建物が出来はじめたのが、この時代だったんですよね。広島朝日ビルが出来たときは、まわりに他のビルがまったくないような状態で。このプロジェクトチームである私たちの中には、そうした広島に対する諸先輩方の貢献を受け継ぎ、もう一度広島に貢献したいっていう思いが根本にあると思っています。このビルをしっかりと竣工させるというのが私たちにとっての成功ではなくて、このビルが出来て、広島の人たちが「あのビルいいよね」とか「あそこ使いやすいよね」とか色々な思いや思い出が生まれるようになって、はじめて成功だと言えるわけです。長い広島の歴史を受け継いで生まれたプロジェクト。だからこそ、やり甲斐があると思います。

 

夕方から始まったクロストーク、すっかり辺りが暗くなっても語りつくせない4人でした。遅くまでありがとうございました!

 

Profile

独立行政法人都市再生機構

西日本支社 中国まちづくり支援事務所

所長

佐々木 克憲

 

独立行政法人都市再生機構

中国まちづくり支援事務所 広島都心部再生課

課長

松村 尚

 

株式会社朝日新聞社

不動産業務室長補佐

中上 貴博

 

株式会社朝日ビルディング

取締役

駒谷 庄二郎

※部署名・肩書は取材当時のものです。