投稿日:2024.03.29

一般社団法人カミハチキテル

代表理事 日高 洋

 

2024年2月2日、当地区の相生通り沿い工事用仮囲いに、カミハチキテルとのコラボシートが掲示されました。(トピックス参照

仮囲いに掲示された“相生通りの未来図”と、本事業への想いに関して、コラボシートの実現に関わった一般社団法人カミハチキテル 日高氏にお話を伺いました。

 

―カミハチキテル設立までの経緯―

 従来、紙屋町地区と八丁堀地区の商圏は別々と捉えられており、両地区を拠点とするエリアマネジメント団体はありませんでしたが、2017年に紙屋町・基町にぎわいづくり協議会と広島市中央部商店街振興組合連合会ら有志が都心の将来に危機感を抱き、「エリアマネジメント勉強会」を開始しました。この勉強会において、両地区が一体のエリアとしてまちづくりを行い、魅力的なまちにしていかなければ都心が衰退してしまうという意識が共有されて動きが加速化、その後、「紙屋町・八丁堀エリアマネジメント実践勉強会」を経て、2020年に企業参画のエリアプラットフォームとなる「カミハチキテル」が設立されました。現在、都市の経済機能が集積して高い利便性を有するという都心の役割に加え、広域経済圏全体のブランドを左右する象徴として躍動する都心の役割を担うべく、日々活動しています。

 

―“相生通りトランジットパーク構想”にかけた想い―

 仮囲いデザインシートにも掲示されているとおり、カミハチキテルでは“相生通りトランジットパーク構想”を未来図として掲げています。

 トランジットパークとは、「車中心から人中心へ」との考え方から、一般の自動車乗り入れを制限し、公共交通のみが通行できる公園のようなみち空間を指す造語です。相生通りをトランジットパークとすることで、居心地の良い上質な空間を作り上げ、広島の人々はもちろん、来街者からも「広島の街は良いなぁ」、「広島で暮らしたい・働きたいなぁ」と感じてもらいたいですね。また、広島が個性を持ちながら盛り上がることは、広域的な周辺地域の持続的なまちづくりにも繋がると考えており、こうしたまちづくりは私の実家がある島根県邑南町にも、良い影響を及ぼすでしょう。

 また、トランジットパーク構想の実現に向けて、昨年、一般社団法人カミハチキテルを設立しました。現在、都市再生推進法人の指定に向けて広島市と協議していますが、都市再生推進法人になれば、広島都心地区の都市再生整備計画や地区計画等を提案することが可能となります。さらに、都心の広場などで、賑わいや交流の創出に寄与する施設(都市利便増進施設)の運営等に関わることができる都市利便増進協定にも加わることができるようになり、トランジットパーク構想に一歩近づくことができると考えています。この構想実現への道のりは長いですが、一歩ずつ着実に積み重ねていきたいですね。

 

―国際平和文化都市“広島”のまちづくり―

 数年前まで、私は広島市役所に勤めていました。大学卒業後、建設会社勤務を経て、広島市役所に入庁したのは1987年です。
 広島市役所の新規採用時のグループ研修(1987年4月)において、平和記念公園内で外国人の方を対象としたインタビューを企画・実施したところ、「平和記念公園周辺の景観」に関する様々な意見に触れることができました。この経験から、広島が国内外問わず多くの人々から注目されていることを改めて認識するとともに、『国際平和文化都市“広島”にふさわしい景観づくり』を目指したいと心に決めました。
 その後、中区建築課に配属され、より良い景観づくりに力を入れました。まだ、広島に景観条例がない時代でしたが、都市美協議制度を活用して平和記念公園周辺や広島城周辺の建築主と協議して、その場所にふさわしい景観となるよう努めました。

 

―基町相生通地区第一種市街地再開発事業の仕掛け―

 2014年には都市機能調整部に配属となり、ひろしま都心活性化プランや広島西飛行場跡地利用計画等を策定しました。
 ひろしま都心活性化プラン(※)とは、国内外の人々や企業などを惹きつける都心の魅力向上などに取り組み、都心を活性化するため、都心の将来像や目指す姿、その具体化に向けた施策等を示したものです。

 当時、広島市内の再開発として具体的な案件がない状況や、市の財政状況も勘案し、再開発を誘発する環境整備(紙屋町・八丁堀地区における都市再生緊急整備地域の指定)が必須と考え、地域指定に向けた取組をこのプランに位置付けました。また、都心では高度経済成長期に建設された建物が多く、今後、その建替えが見込めることから、再開発による玉突きの都心更新が実現するよう、第一弾となる再開発事業の具体化の検討を進めていきました。その再開発事業が『基町相生通地区第一種市街地再開発事業』なのです。公共施設の機能更新、広島朝日会館跡地の有効活用、広島商工会議所の移転、機能中断なしの基町変電所更新といった、関係者がWin-Winの関係となるような事業構築に努めました。私はマツダスタジアムができるまで長く関わったのですが、マツダスタジアムでの経験(市民・ファン、経済界、プロ球団、行政が一体となり、Win-Winの関係を構築することで事業が前に進んだ)が役に立ちました。
 この再開発事業は、国際水準の都市機能の集積・強化を図るとともに、“原爆ドーム周辺の景観の改善”にも寄与する事業です。私が広島市役所入庁時、心に決めた『国際平和文化都市“広島”にふさわしい景観づくり』、40年近く時間がかかりましたが、その景観にようやく近づきますので感無量です。そして、この事業を契機として、広島において再開発による玉突きの都心更新が起こることを期待しています。

 

―基町相生通地区第一種市街地再開発事業に果たしてほしい役割―

 この再開発は複合かつ高度な都市機能を有しており、“広島の未来を担う”地域の人・オフィスで働く人・商工会議所に集う人と、“世界の未来を担う”ホテルに宿泊するインバウンドの人が集まる場所になると考えています。この事業の大きな役割の一つは、これらの集まった人々が、相生通りからの連続した空間が特徴的の1階のオープンスペース、他にはあまり見られない相生通りを眺めることができる6階オープンスペースにおいて、出会い・交流できる機会が生まれることではないでしょうか。きっと、広島に新しい“何か”が生まれるきっかけとなると思っており、相生通りから広島を盛り上げることを目指すカミハチキテルとして、この事業がそのトリガーとなることを大いに期待しています。


※外部リンク

 カミハチキテル(https://kiteru.site/

 ひろしま都心活性化プラン(広島県・広島市/https://www.city.hiroshima.lg.jp/soshiki/133/6512.html