広島大学 田中 貴宏 教授 、株式会社竹中工務店 秦 敏彦 様 「広島市都市デザインアドバイザー会議 座長・設計者 インタビュー」
投稿日:2024.09.30
広島大学 大学院先進理工系科学研究科
建築学プログラム 都市・建築計画学研究室
教授 田中 貴宏(写真中央右)
株式会社竹中工務店
大阪本社 設計部 設計第2部門
設計第3グループ長 秦 敏彦(写真中央左)
<インタビュアー>
独立行政法人都市再生機構
中国まちづくり支援事務所 広島都心部再生課
課長 松村 尚(写真左)
中国電力ネットワーク株式会社
業務部 広島第二用地グループ
担当副長 松浦 克俊(写真右)
広島市都市デザインアドバイザー会議の座長を務める広島大学大学院先進理工系科学研究科 田中教授と本事業の設計を担当する竹中工務店 秦氏のおふたりに広島の“街づくり”と本事業への想いについてお話を伺いました。
田中
広島大学工学部の建築で都市計画・街づくりを専門分野にしています。また、広島市の都市デザインアドバイザー会議で2020年から座長を務めており、その会議で本再開発事業と接点を持たせていただきました。
-本事業高層棟のデザインを初めてご覧になったときの印象をお聞かせください。
田中
都市デザインという立場からみますと、ランドマークができるのだと思いました。また、建物の足元をどうやって街と繋いでいくかがポイントになるなと思いましたし、そこが特徴的だったという印象です。
-街とのつながりについて、設計する際に意識された点はありますか。
秦
境界を作らないことを意識していました。都市デザインアドバイザー会議でも“境界をデザインする”というキーワードをいただき、実際目に見える境界の話も含めて、相生通りを官庁街と繁華街の境界にしない、心の中のボーダーレスを作る・シームレスにつなぐことを大事にしていました。
田中
今言っていただいたように都市デザインアドバイザー会議の中でも境界をどのようにデザインしていくかが議論の中で出てきたテーマだったと思っています。
人の気持ちの中のボーダー、エリアとエリアの境界、公共空間とプライベートな空間の境界、いろんな意味が込められていて、それらを少し曖昧にしていこうということが全体のコンセプトとしてはあったのかなと思っています。
-街の人に集ってもらう、憩いの場所となるためのデザインの工夫はありますか。
秦
街の歩道から一歩入ってもらうために、人々がいつも見ているものがそこにあることが大事なのだと思い至りました。広島で当たり前の景色は何だろうと考えた時に、“川”“山と広い空”“空に伸びるタワー”がありました。自然の風景を無理に持って来るのではなく、日常の中にあるものを配置することで人々が集まりやすいのではと思いました。
-広島は川沿いの緑も印象的ですが、街中には緑が少ないように感じます。
田中
個人的にこだわって意見させていただいたところです。広島の街中は緑が非常に少ないので、本事業の緑の配置を見て、良いなと思った人が同じように緑を配置して、都心部に緑が増えていくと良いなと思います。また、人々が休める空間「オアシス空間」を点在させることが、街全体の魅力につながると思います。
-都市デザインアドバイザー会議で最終報告を受けた時の印象を教えてください。
田中
会議の場では難しいお願いもしましたが、何度か大学まで相談にも来てくださり、とても丁寧に対応していただいたと思っています。こうしてできたものを通して、広島の街のこれからにつながるプロジェクトになったと思います。
-6階のテラスに期待することはありますか。
田中
6階の活動が1階のグランドレベルの方たちにも感じられるようにしていただけたらなと思います。6階に行くと何かある。街と繋がれるポイントがあるような状況になればいいなと思っています。
また、個人的には高校生の放課後の居場所が増えるといいなと思います。高校生が街とのつながりを感じられる1つのポイントになり、それが地域に対する愛着につながっていくのではと思っています。広島は人口流出が多いという話もありますので、地域とのつながりを作って愛着を持ってもらうことで地元への就職を促す効果もあるのではないかなと考えています。
秦
熊本に視察に行ったときに、とある施設のカウンターに高校生が集まっていて、自分たちだけの場所、包まれた場所、穴場感を高校生は求めてしまうのだろうなと思いましたし、そういう場所になってほしいなと思います。
-最後に、本事業に期待することを教えてください。
田中
日常的に使われる場所、街づくりの活動が見える場所になってほしいです。そして、それらを通して、魅力や楽しさが周りの街に広がっていくような事業になってほしいと思っています。さらに将来的には広島都心部全体の魅力向上につながっていくのではと期待しています。
人が集まる広島の街づくりや設計に込められた思いについて、より理解を深められる時間となりました。長時間のインタビューありがとうございました。